10月は、少し遠くまで出かけたくなる。
暑さがやわらぎ、美術館まで歩く時間も心地よくなる季節。京都と東京ではこの秋、モネ、ピカソ、ルオー、マルケ、ターナーなど、西洋美術と近代美術を楽しめる展覧会が続きます。
今回は、NACKが2026年10月に行きたい展覧会を京都と東京から選びました。
ただ有名な作品を見るだけではなく、過去の表現がどのように現代へ受け継がれたのか。海外の文化を日本の作家がどう吸収したのか。アートとデザインは、日常をどう変えられるのか。
そんな視点を持って、秋の予定を考えてみます。
10月4日で終了した展覧会と、東京への巡回
フォンタネージ—イタリアの光・心の風景|京都から東京へ
京都国立近代美術館の「フォンタネージ—イタリアの光・心の風景」は、10月4日に京都会場を終えました。10月17日からは、東京の三菱一号館美術館で鑑賞できます。
アントニオ・フォンタネージは、明治時代の日本で西洋絵画を教えたイタリア人画家。教育者として知られていますが、その背景には、ミレーやコローを研究し、ターナーやコンスタブルの表現を吸収しながら、自らの風景画を追究した一人の作家がいました。公式紹介に記された「モティーフを高らかに歌わせよ!」という言葉からも、光や自然をただ写すのではなく、絵画として響かせようとした姿勢が伝わります。[1]
何度も同じ主題を描きながら、光と自然をどう捉えるかを探し続けたフォンタネージ。その姿は、モネをはじめとする近代の風景画に惹かれる人にも面白く映るはずです。
京都会場は10月4日で終了。東京会場は10月17日から2027年1月24日まで開催されます。[2]
- 京都会場:京都国立近代美術館
- 京都会期:2026年7月18日(土)〜10月4日(日)
- 東京会場:三菱一号館美術館
- 東京会期:2026年10月17日(土)〜2027年1月24日(日)
- 東京の開館時間:10:00〜18:00。祝日を除く金曜日、第2水曜日などは20:00まで
- 東京の休館日:原則月曜日。祝日、10月26日・11月30日・12月28日・1月18日は開館。12月31日・1月1日は休館
- 東京の一般料金:窓口2,300円、オンライン2,100円
瀧口修造 書くことと描くこと|東京・10月4日終了
詩人、美術批評家、展覧会の企画者、そして造形作品の制作者。
瀧口修造は、一つの肩書きに収まらず、「書くこと」と「描くこと」の間を移動しながら活動した人物です。
本展では、石橋財団が所蔵する瀧口作品を中心に、パウル・クレー、マルセル・デュシャン、ジョアン・ミロなどの関連作品を含む約140点を紹介。瀧口が作家や作品とどのように向き合い、自分の思考と表現へつなげていったのかをたどります。[3]
アートをつくる人だけでなく、調べ、考え、選び、伝える人にも気になる展覧会です。アートの研究と編集を活動の軸に置くNACKとしても、注目したい一展でした。
- 会場:アーティゾン美術館
- 会期:2026年6月23日(火)〜10月4日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00、金曜日は20:00まで
- 休館日:月曜日
- 一般料金:ウェブ予約1,200円、窓口1,500円
エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる|東京・10月4日終了
同じアーティゾン美術館で開催されていたのが、20世紀イタリアを代表する建築家・デザイナー、エットレ・ソットサスの展覧会です。
ソットサスは、合理性や機能性だけでは人の生活を豊かにできないと考え、大胆な色彩と形、ユーモアをデザインへ持ち込みました。
本展は、初期から晩年までの100点を超える石橋財団のコレクションを一挙に公開する、日本初の大規模回顧展です。[4] プロダクトを機能として見るだけでなく、人の感情や生活を動かす表現として捉え直す機会になりそうです。
瀧口修造展と同じチケットで鑑賞できた展覧会です。会期は10月4日で終了しました。
- 会場:アーティゾン美術館
- 会期:2026年6月23日(火)〜10月4日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00、金曜日は20:00まで
- 休館日:月曜日
- 一般料金:ウェブ予約1,200円、窓口1,500円
京都で一日過ごすなら。大山崎でモネとルオーを観る
没後100年 クロード・モネ展|京都
京都でゆっくりアートに触れるなら、アサヒグループ大山崎山荘美術館へ。
同館には、安藤忠雄が設計した円形展示室「地中の宝石箱」があります。そこは、クロード・モネの《睡蓮》を展示するためにつくられた空間です。
「没後100年 クロード・モネ展」では、同館が所蔵するモネ作品全8点を二つの会期に分けて展示。10月に観られる第2期では、そのうち6点が公開されます。[5]
作品だけではなく、建築や庭園、周囲の自然まで含めて味わえるのが大山崎の魅力です。モネが見つめた光や水、植物の変化を、美術館の外に広がる風景とも重ねて観てみたいと思います。
- 会場:アサヒグループ大山崎山荘美術館
- 第2期:2026年9月19日(土)〜2027年4月11日(日)
- 開館時間:10:00〜17:00
- 休館日:原則月曜日(祝日の場合は翌火曜日)。10月12日・11月23日・11月24日・11月30日は開館、10月13日は休館
- 一般料金:1,500円
ジョルジュ・ルオー ―いつくしむまなざし、祈りの筆あと|京都
同じ入館料で、ジョルジュ・ルオーの展覧会も鑑賞できます。
ルオーの作品を特徴づけるのは、ステンドグラスを思わせる黒い輪郭線と、幾層にも塗り重ねられた絵具です。
本展では、大山崎山荘美術館が所蔵する4点に、パナソニック汐留美術館の所蔵作品約35点を加え、展示替えを含む全41点を紹介します。[6]
モネが移ろう光を描き、ルオーが人の内面にある光を描いたと考えると、二つの展覧会の見え方も変わるかもしれません。
- 会場:アサヒグループ大山崎山荘美術館
- 会期:2026年9月19日(土)〜12月6日(日)
- 開館時間:10:00〜17:00
- 休館日:原則月曜日(祝日の場合は翌火曜日)。10月12日・11月23日・11月24日・11月30日は開館、10月13日は休館
- 一般料金:1,500円。モネ展も鑑賞可能
マティスが好きなら観ておきたい。アルベール・マルケ展
アルベール・マルケ展|東京
アルベール・マルケは、パリでアンリ・マティスと出会い、ともにフォーヴィスムと呼ばれる新しい表現を展開した画家です。
ただし、マルケの絵は強烈な色彩だけでは語れません。「マルケのグリ」と呼ばれる灰色をはじめ、繊細な中間色を使いながら、セーヌ川や港、旅先の水辺を描き続けました。マティスがマルケを「我らの北斎」と呼んだという紹介も、その簡潔な筆致と日本美術とのつながりを考える入口になります。[7]
同じ場所を、時間や天候を変えて繰り返し描いた点では、モネとの見比べも面白そうです。一方で、景色を簡潔な線と色面へ整理するマルケの画面には、デザインを見るような明快さもあります。
日本では35年ぶりとなる回顧展。初期から晩年までの約90点が集まります。
- 会場:SOMPO美術館
- 会期:2026年9月22日(火)〜12月13日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00、金曜日は20:00まで(最終入館は閉館30分前)
- 休館日:月曜日。10月12日・11月23日は開館、10月13日・11月24日は休館
- 一般料金:当日2,000円、事前購入1,800円(一般は26歳以上。25歳以下は別料金)
- 素描類の展示替え:前期は11月1日まで、後期は11月3日から
西洋美術の原点までさかのぼる。ルーヴル美術館展
ルーヴル美術館展 ルネサンス|東京
近代美術からさらに時代をさかのぼりたいなら、国立新美術館の「ルーヴル美術館展 ルネサンス」へ。
ルーヴル美術館のコレクションから、絵画、彫刻、版画、素描、工芸など50点余りが紹介されます。
注目は、日本初公開となるレオナルド・ダ・ヴィンチの《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》。人物の外見だけでなく、その内面にある複雑な感情をどう描くのか。レオナルドが向き合った問いは、時代を超えて現在の表現にもつながっています。[8]
作品の知識を確認するよりも、描かれた人物が何を考えているように見えるのか、自分なりに想像しながら観てみたい展覧会です。
- 会場:国立新美術館
- 会期:2026年9月9日(水)〜12月13日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00、金・土曜日は20:00まで
- 休館日:原則火曜日。11月3日・12月8日は開館、11月4日は休館
- 一般料金:2,400円
- 予約:12月7〜13日は日時指定制。詳細・販売方法は公式サイトで要確認
10月16日開幕。ピカソを現代の作家と読み直す
トラバース:ピカソ「347シリーズ」と現代作家たち|京都
京セラギャラリーでは、ピカソ晩年の銅版画「347シリーズ」と、現代作家7名の作品を組み合わせた展覧会が開かれます。
参加作家たちは、京セラが所蔵する「347シリーズ」を調査し、自分のテーマと重なる作品や強く惹かれた作品を選びました。会場では、選ばれたピカソの版画と、それに応答する現代作品が展示されます。[9]
「トラバース」には「横断する」「詳しく考察する」という意味があります。完成された巨匠の作品としてピカソを眺めるのではなく、別の作家が何を発見し、自分の表現へどうつなげたのかを見る展覧会です。
過去を調べ、現在の視点から読み直し、次の表現をつくる。その構造は、NACKが考える「文化を研究し、編集し、未来へつなぐこと」にも重なります。
- 会場:京セラギャラリー/京セラ本社ビル1階
- 所在地:京都市伏見区竹田鳥羽殿町6
- 会期:2026年10月16日(金)〜11月28日(土)
- 開館時間:10:00〜17:00
- 休館日:日曜日、11月23日(月・祝)
- 入場料:無料
- 個人での鑑賞は予約不要
10月24日開幕。光と西洋美術の受容を考える
テート美術館 ターナー展――崇高の絵画、現代美術との対話|東京
J.M.W.ターナーは、移ろう光や大気、荒れる海、蒸気や煙といった、形をとどめないものを描き続けた画家です。
本展では、世界最大のターナー・コレクションを持つテート美術館から、油彩画や水彩画など80点以上を紹介します。さらに、ターナーの作品を戦後・現代美術と併置し、オラファー・エリアソンなどの作品を通して、気候変動、産業化、植民地主義といった現在の問題へ接続します。[10]
モネの光を好む人が、その少し前の時代へ戻ってターナーを観る。あるいは、過去の名画が現代社会とどう結びつくのかを考える。どちらの入口からも楽しめそうです。
- 会場:国立西洋美術館
- 会期:2026年10月24日(土)〜2027年2月21日(日)
- 開館時間:9:30〜17:30、金・土曜日は20:00まで
- 休館日:原則月曜日。11月23日は開館、11月24日・12月28日〜2027年1月1日は休館
- 一般料金:2,400円
- チケット:展覧会公式サイトの購入案内を確認
エトランゼたち —洋画家たちのヨーロッパ体験|東京
明治以降、多くの日本人美術家がヨーロッパへ渡り、西洋美術を学びました。
本展では、黒田清輝、藤島武二、安井曾太郎、藤田嗣治らの滞欧作品を紹介。画塾でのデッサン、美術館での模写、現地の人々の肖像や旅先の風景から、彼らがヨーロッパで何を見て、何を持ち帰ったのかを読み解きます。[11]
大切なのは、西洋の表現をそのまま模倣したかどうかではありません。他者の文化と出会ったあと、それをどう自分の表現へ変えたのか。異文化を吸収しながら、新しいものをつくる。その過程を考える展覧会です。
- 会場:アーティゾン美術館
- 会期:2026年10月24日(土)〜2027年1月31日(日)
- 開館時間:10:00〜18:00、金曜日は20:00まで
- 休館日:原則月曜日。11月23日は開館、11月24日・12月28日〜2027年1月4日は休館
- 一般料金:ウェブ予約1,200円、窓口1,500円。予約枠に上限あり
10月、どの展覧会へ行こう
京都で一日過ごすなら、大山崎でモネとルオーを。
マティスやフォーヴィスムが好きなら、東京でマルケを。
過去の作品が現代の表現へどうつながるのかを考えるなら、京都のピカソと東京のターナーを。
月初にはソットサスと瀧口修造の展覧会も開かれていました。両展は10月4日で終了し、この記事では10月の記録として残しています。
すべてを回る必要はありません。今の自分が少しでも気になった展覧会を一つ選び、予定表に入れてみる。
アートと日常が出会う入口は、まず「この日に行こう」と決めるところから始まります。

