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最近の僕のデザイン、やばすぎる。——MIMESISのジャケットを作るまで

全部AIです。じゃあ来期のデザイン予算はゼロ? 部長、ちょっと待ってください。MIMESISの制作途中から、僕がいま夢中になっている理由を話します。

両手でNACK『MIMESIS, Vol. 1』のジャケットを持つ、紙のコラージュによるNACK notes #020の表紙。

NACK notes #020|仕事を読む

「最近の僕のデザイン、やばすぎる」

自分で言うなよ、と思う。僕もそう思う。でも、今回は言わせてほしい。

レーベルを約二日で立ち上げて、アルバムのジャケットを作って、サイトを整えた。NACK Journalのサムネイルもリニューアルした。最近始めたNACK Notesの表紙も、もう完全に僕のお気に入りだ。音楽はSpotifyにも届いている。自分の頭の中にあったものが、次々に外へ出てきた。

これ、制作には全部AIを使っている。ChatGPTです。Codexです。本当に、思ったことを形にしてくれる。嬉しい。自分の作ったものを何度も見に行ってしまう。そのたびに、作ったときの手応えがまだ残っていると感じる。

ここまで聞くと、「じゃあ来期のデザイン予算はゼロですね」と言われそうだ。部長、本部長、ちょっと待ってください。作れるようになったからこそ、今まで諦めていた細部まで考えられるようになった。その話をしたい。

今日は『MIMESIS, Vol. 1』のジャケットを見ながら、その「こだわったところ」を話したい。途中の画像も並べる。完成した一枚だけでは見えない、僕とAIのやり取りの跡がある。

名画を歌にするなら、ジャケットから聴きたくなってほしい

MIMESISは、絵画を入口に音楽と映像を作るシリーズだ。第一弾にはモネ、ゴッホ、マティス、フェルメールを入口にした四つの曲を並べた。絵を知らない人にも、まず歌や映像を楽しんでほしい。そこから「この画家って誰だろう」と思ってくれたら嬉しい。

だからジャケットにも、その入口になってほしかった。水面の光、渦を巻く青、花と果実、人物のまなざし。それぞれ違う絵の気配を、一枚の四角に入れる。見た瞬間に何かが気になって、曲を聴きたくなる。そんな顔にしたかった。

中央では、アニメの顔と写実的な顔が、破った紙の境目で重なっている。このコラージュの構図が気に入っていた。左下には水の光、右には花と果物、上には青の流れがある。いろいろ入っているけれど、視線は人物へ戻ってくる。配信画面で小さくなっても、下の「MIMESIS」が一枚を支える。

僕はこの構図を残したかった。だから途中からは、毎回まったく別のジャケットを出してもらうのではなく、気に入っているところを守りながら、違和感のあるところを詰めていった。

途中経過1|古いレコードにしたかった。汚してほしかったわけではない

かなり近い画像が出たときは、嬉しかった。二つの描き方の顔、水と花、紙の裂け目。もうジャケットになりそうだ。ところが、よく見ると中古レコード感が強い。縁の焦げたような色、紙の汚れ、全体の黄ばみ。古いレコードの雰囲気はある。でも、僕が欲しかった古さとは少し違った。

そうじゃないんだよな。僕が欲しいのは、古いんだけど大事に保管されてきたレコード。状態S。皺や薄いスレはあっていい。でも、汚れや焦げ、強い黄ばみは要らない。白はパキッと白くあってほしい。

「古い」と「汚い」は、僕の中では別のものだった。でも画像を見るまでは、そこまで細かく分けて伝えられていなかった。目の前に出てきたものを見て、初めて「ああ、僕はこの古さが欲しかったんだ」と分かる。AIに注文しているつもりで、自分の好みを自分に説明している。

そこまで細かく言えるようになったこと自体が、今回の制作の面白さでもあった。

初期案。黄ばんだ紙と強いスレのあるMIMESISジャケット。
初期案。黄ばんだ紙と強いスレのあるMIMESISジャケット。

途中経過2|白を戻す。でも、好きなところまで消さない

こちらは、紙の白さを戻した比較案だ。人物も、水面も、花も見やすい。二枚を並べると、さっき何が気になっていたのかが分かりやすくなる。

ただ、全部を新品みたいに整えてしまうと、今度は紙の手触りまで消えてしまう。皺やスレは少し残したい。実物のジャケットを蛍光灯の下に置き、もう一度撮影したような反射も欲しい。僕が何度も「再撮影」と言っていたのは、その感じだった。

同時に、元のコラージュ構図と奥のアニメの顔は残す。花と果実も残す。水面の表現を直したいからといって、好きだった顔まで別人になると困る。ここでは「何を変えるか」と同じくらい、「何を動かさないか」を伝える必要があった。

これは仕事の修正でもあると思う。「もう少しこうして」のたびに、最初に良かったところまで消えてしまう。直しているはずなのに、だんだん何を作っていたのか分からなくなる。だから僕は、一枚前に戻って見比べた。今の方がいいところと、前の方が良かったところを、ちゃんと分けて見たかった。

比較案。白を戻し、顔、水面、花をすっきり見せたMIMESISジャケット。
比較案。白を戻し、顔、水面、花をすっきり見せたMIMESISジャケット。

最終形|黒い文字を、黒いまま光らせたい

白と質感が落ち着いてくると、今度は文字が気になる。一番下の「MIMESIS」は黒く、重く置きたい。でも、ただの黒ベタでは終わりたくない。黒光りする銀箔をシルクスクリーンで重ねたような質感にしたかった。

僕は、きらきら光るものが好きだ。透明な筐体のコンピュータや、光を返すステッカー、CDを傾けると色が走る感じ。見る角度で表情が変わる、あの物質の面白さがある。それを、動かない一枚の画像に切り取ったように見せたい。

もちろん、実物に箔を刷ったという話ではない。配信ジャケットの画像の中で、紙とインクと光の気配を作っている。だから、ただ銀色にすればいいわけでもない。黒い文字として画面を支えながら、表面だけが光を返す。その具合を詰めたかった。

文字組みでは、左上の「NACK」を素直に読ませ、VOL. 1は少し実験的にする。ほかの書体はHelveticaのような端正さに寄せる。顔も花も強いので、文字まで全部が主張すると落ち着かない。四隅の余白、文字同士の近さ、写真との距離を見て、一枚として収まるところを探した。

Adobeのなかった時代に、写真を切り、文字の位置を決め、版を重ねていた人たちは、どんなふうに画面を組んでいたんだろう。そんなことも想像していた。使っている道具は新しいのに、欲しくなるのは紙や印刷の感触なのだから面白い。

そうして最後の画像を見ると、最初からこの形だったように見える。でも途中の二枚と並べれば、白を戻し、構図を守り、文字に光を足した跡がある。僕が「思った通りに作ってくれる」と言うのは、この往復まで含めての話だ。見て、気づいて、言い直せる。その速さが、たまらなく楽しい。

完成したNACK『MIMESIS, Vol. 1』のジャケット。
完成したNACK『MIMESIS, Vol. 1』のジャケット。

二日で作れた。その前から、好きなものは溜まっていた

この楽しさは、MIMESISだけで終わらなかった。同じ時期にcrazy33を立ち上げ、サイトを整え、ほかのジャケットも作った。NACK JournalとNotesのサムネイルにも、自分が好きな余白やコラージュの感じが出てきた。作れる場所が増えると、頭の中に溜まっていたものが、あちこちから出てくる。

僕の個人名義、Yudai Tamuraの『Desire Energy』もそうだ。スマホにあった本人写真を使い、青い顔をモーフィングさせ、印刷や銀箔のような質感を探った。自分の顔をそのまま出すのは少し億劫だったから、自分で自分を変形させた。僕自身による、僕自身のコラージュだ。こちらもかなり気に入っている。

このNotesの最初の表紙で手に持っていたのは、その青いジャケットだった。せっかくなので、ここにも残しておく。MIMESISとは別の作品だけれど、紙や光へのこだわり、顔をそのまま見せずに組み直す面白さは、僕の中でつながっている。

当初のNACK notes #020表紙案。両手で『Desire Energy』を持っている。
当初のNACK notes #020表紙案。両手で『Desire Energy』を持っている。
Yudai Tamura『Desire Energy』。本人写真を青く変形した別作品のジャケット。
Yudai Tamura『Desire Energy』。本人写真を青く変形した別作品のジャケット。

こういう画像を見ていると、「僕は、どうしてこれをいいと思うんだろう」と気になってくる。ダリを思い出したり、過去に見た作品のモチーフが頭に浮かんだりする。そこでまたAIを使って、NACK Journalで画家や表現の背景を調べ直した。まず自分が読みたかったからだ。

作って、気に入って、その理由を知りたくなる。調べてみると、次に作りたいものが出てくる。レーベルの形は二日で作れたけれど、好きな音楽や服や印刷物を見てきた時間まで二日だったわけではない。AIのおかげで、その蓄積を形にする速度が急に上がった。僕がいま興奮しているのは、そこだと思う。

作れるようになった先に残る仕事

画像が速く作れるようになったのは本当だ。以前なら費用や時間の都合で試せなかった案も、今は見比べられる。その変化は大きいし、制作の進め方も予算の使い方も変わると思う。

ただ、今回僕が何をしていたかを思い出してほしい。古さが強すぎると気づき、白を戻し、好きな顔を残し、黒い文字の光り方を決めた。そして、そのジャケットをどこに置き、どう聴いてもらうかまで考えた。生成が速くなるほど、こうした判断を何度も試せるようになった。

僕は今回、企画する人、頼む人、選ぶ人、最後に名前を載せる人を一人で兼ねていた。だから進めやすかった面もある。会社でやるなら、誰が何を決めるのか、何をもって「これで出そう」とするのかも必要になる。「AIを入れたので、あとは皆さんよろしく」では、案が増えても選び切れないと思う。

僕だったら、速くなった分を、もう一案試すことや、小さな画面で確かめること、聴いてもらう入口を作ることに使いたい。十枚作ったという報告のあとに、「その中から、なぜこの一枚を選んだのか」を話せるようにしたい。今回、途中の画像まで並べたのも、その話をしたかったからだ。

だから、速く作れるようになった分、何を作るか、何を選ぶかにもっと時間を使いたい。やりたかったことが、以前よりできるようになった。来期の予算の話も、その変化を見ながら考えてほしい。

今度は、そのジャケットの向こうで歌ってほしい

そして、作ったものを眺めて喜んでいるだけでは、まだ足りない。自分でも何度も見返したくなるこのジャケットを、今度は誰かが見て、曲を聴いてくれたら嬉しい。さらに、その人の声で歌ってくれたらどうなるだろう。

絵から音楽を作り、ジャケットを作った。完成した一枚を自分で何度も見返したあとで、今度はこの曲が誰かの声でどう変わるのかを聴きたくなった。

ここで少し、宣伝をさせてください。MIMESISの「歌ってみた」シリーズを始めています。最初の曲は、モネから生まれた「光を追いかけ」。まずは作者の僕が、寝起きの一発撮りで歌いました。公開した動画(外部サイトを新しいタブで開く)では、顔にモネのコラージュのお面を重ねています。歌の出来も含めて、そのまま見てもらえたらと思う。

次は、あなたの番です。僕と同じように歌う必要はありません。声だけでも、顔を出さない映像でも、別の言語でもいい。歌い手が変わると、僕が作った曲から僕には見えなかったものが出てくるはずです。上手さを競いたいというより、その違いを聴きたい。初めての人にも、気軽に参加してほしいです。

歌詞付きカラオケ動画と伴奏WAVはこちら(外部サイトを新しいタブで開く)。素材を使って歌い、YouTubeやSNSに公開した作品のURLを、僕の歌ってみた動画(外部サイトを新しいタブで開く)の固定コメントへ返信してください。投稿には「NACK / MIMESIS」と「#NACK歌ってみた」を添えてもらえると嬉しいです。

第1回の締め切りは2026年10月18日(日)23:59(日本時間)。応募作品はNACKで紹介します。企画と参加方法の詳しい案内はNACK Journalにまとめました(外部サイトを新しいタブで開く)。

最近の僕のデザイン、やばすぎる。そうやって自分で喜べるジャケットができたから、そこに入っている音楽も外へ出したくなった。AIと作れるようになって嬉しい、という話は、僕の中では誰かが歌ってくれるところまでつながっています。

僕より上手に歌える人も、初めて歌う人も。あなたの「光を追いかけ」を聴かせてください。


関連:『MIMESIS, Vol. 1』(外部サイトを新しいタブで開く) / 歌ってみた・参加案内(外部サイトを新しいタブで開く) / crazy33(外部サイトを新しいタブで開く) / NACK Notes(外部サイトを新しいタブで開く)

    NACK notes / PROFILE

    田村 祐大

    Designer / NACK Founder

    岡山県出身、京都在住。京都芸術大学芸術学部卒業。暗号資産・Web3領域のプロダクトデザインに約7年間携わった後、NACKを始動。

    NACK notesでは、映画、YouTube、音楽、車、日々の選択を、自分の経験とアート・デザインの視点から読み直す。専門家として結論を示すのではなく、一人の読み手として考えた過程を記録している。