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デザインは一人では完成しない——アルファ ロメオとジウジアーロの3台を「読む」

CGオンエアを入口に、美しさ、機構、制約、記憶の更新について考えた

Yudai TamuraDesigner / NACK Founder

1975年、1980年、2008年の三つの時間を線でつないだ抽象図

YouTubeの読書感想文 #001 視聴したのは、CGオンエアによるアルフェッタGT、アルファスッド スプリント、ブレラの試乗動画。本稿は動画全体の要約や車両評価ではなく、そこから私に残った問いを記すものです。

動画に「読書感想文」を書く、という言い方は少し変かもしれない。けれど、映像にも構成があり、語り手の時間があり、見終えたあとに自分の中へ残る一文がある。だから私は、動画も読むように見てみたい。

35分の映像を通して見えてきたのは、よいデザインは、誰か一人の頭の中だけでは完成しないということだった。

三台を並べると、作風より「関係」が見える

動画に登場するのは、1975年のアルフェッタGT、1980年のアルファスッド スプリント、2008年のブレラ。年代も、駆動方式も、重量も違う三台を、ジョルジェット・ジウジアーロとアルファ ロメオという一本の線でつないでいる。

もしこれがジウジアーロの作品集なら、共通する線や面を探したかもしれない。けれど、同じブランドの三台として見ると、問いが変わる。「この人らしい形は何か」ではなく、この人と、このブランドが出会ったとき、何が可能になったのかと考えたくなる。

作家性は、単独で保存される署名ではない。相手の歴史、技術、予算、用途、時代とぶつかりながら、その都度ちがう姿になる。三台の差は、作風がぶれた証拠ではなく、関係が生きていた証拠に見えた。

美しい形の内側に、機構がある

アルフェッタGTの章では、端正なクーペの姿と、トランスアクスル、ド・ディオン式リアサスペンション、インボードブレーキといった機構が、別々の話として語られない。試乗では、なぜアルファ ロメオがその構成を選んだのかが、前後重量配分やハンドリングの感触から読み解かれていく。

ここに、この動画の読みどころがある。

デザインは、完成した中身を最後に包む皮膚ではない。何を優先し、何を後ろへ置き、どこへ重さを配るのか。見えない判断の積み重ねが、やがて外から見える形になる。美しさと技術を別々に褒めるのではなく、両方を同じ思想の結果として見る。その視点に、アルファ ロメオというブランドの輪郭があった。

これはクルマだけの話ではない。ウェブサイトでも、空間でも、組織でも、表面だけを統一すればブランドになるわけではない。裏側の構造と、表に現れる振る舞いが同じ方向を向いたとき、初めて「らしさ」が生まれる。

制約は、作家性を薄めるだけではない

アルファスッド スプリントは、軽量な前輪駆動車を土台にする。ブレラは、会社の経営や技術提携を含む、別の時代の条件を背負って量産化された。自由に線を引くだけでは、どちらも生まれない。

制約という言葉には、創造性を小さくする響きがある。けれど三台を続けて見ると、制約は輪郭を奪うだけでなく、何を守るべきかを露出させるものにも思える。

軽さ、広さ、駆動方式、生産技術、経営条件。変えられないものがあるから、デザイナーと技術者は、どこにアルファ ロメオらしさを残すのかを選ばなければならない。そこで表れるのは、同じ装飾の反復ではなく、判断の一貫性だ。

ブランドとは、いつも同じ顔をすることではない。条件が変わるたびに、何を変え、何を変えないかを選び直すことなのだと思う。

批評は、過去の自分も批評する

とりわけ印象に残るのは、ブレラの試乗終盤だ。加藤哲也さんは、登場当時に抱いた違和感を振り返りながら、時間を置いて乗ったことで評価を改める。27分台の終わりに「ブレラ、見直した」と語り、今回の試乗で自分の記憶が更新されたという趣旨を続ける。

レビューは、ときどき最初の判断を保存するための文章になる。一度下した評価を変えると、負けたように見えるからだ。けれど本来、見る側にも時間が流れている。対象が変わらなくても、自分の経験が変われば、見えるものは変わる。

アルファスッド スプリントの章では、その逆方向の時間も映る。若い頃に初めて手にした輸入車へ再び乗り、当時の記憶と現在の身体が重なる。懐かしいから無条件に肯定するのではなく、いま運転してもなお何が魅力なのかを確かめている。

批評とは、対象だけを裁くことではない。過去の自分の見方も、現在の自分で読み直すことなのだと思った。

NACKでデザインしているのも、関係なのだと思う

NACKで扱うアートも、作品だけで完結しない。作品と空間、作家と鑑賞者、文化と日常、思想と運用。そのあいだに、見えない関係がある。

同じ作品でも、どこに置き、誰が語り、どんな時間の中で出会うかによって意味は変わる。そこで私がデザインしているのは、作品そのものというより、作品が届くための関係なのかもしれない。

ジウジアーロの名前だけでも、アルファ ロメオの名前だけでも、三台の魅力は説明しきれない。デザイナー、ブランド、技術者、経営条件、そして乗る人の記憶。その複数の力が交差した場所に、形が残った。

だから、よいものを見たときに「誰が作ったのか」だけで終わらせず、次はこう問いたい。

どんな関係が、この形を可能にしたのか。

この問いから、NACK NOTESを始める。

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Written by

Yudai Tamura / 田村 祐大

Designer / NACK Founder