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営業は陽キャ、広報はネクラ、マーケは陰キャ。——全部、僕の中にいた

営業、広報、マーケ、広告、デザイン、エンジニアリング。Web3での7年間を振り返ると、全部自分の中にあった。

握手、取材ノート、虫眼鏡と分析資料、設計図をコラージュし、「営業は陽キャ、広報はネクラ、マーケは陰キャ。」と配したNACK notes #013のサムネイル。

1. 営業も、広報も、マーケも、全部僕の中にいる

営業は陽キャ。広報はネクラ。マーケは陰キャ。広告は目立ちたがり。デザイナーは自由人。

そんなふうに仕事を眺めていたら、気づいてしまった。

これ、全部僕の中にあるわ。

人と話して未来にワクワクしている自分もいれば、一人で言葉の細部を気にしている自分もいる。反応をこそこそ観察し、派手な見せ方を考え、形にこだわり、最後には「で、これ、本当に動くの?」と確かめる自分までいる。

僕は約7年間、Web3領域でプロダクトデザイナーとして働いてきた。ものをつくったら終わり、という感覚はあまりない。つくったものを知ってもらい、価値を理解してもらい、選んでもらい、実際に使ってもらう。その先まで気になってしまう。

売ることも、伝えることも、使いやすくすることも、僕の中ではつながっていた。だから、職種の話を書いているつもりが、自分の仕事の話になった。

ここでいう「人格」は、仕事中に顔を出す自分の一面のこと。MBTIを使った職種別の診断や、各職種に多いタイプの調査ではない。以下のタイプとの対応は、働くときの視点を説明するための僕なりの比喩だ。「全部ある」も、すべてのMBTIタイプに該当するという意味ではない。

2. 僕の中の営業は、未来を約束する

僕は仕事の中心に「約束」を置いている。

営業は、まだ存在していない未来を相手に見せ、「そこまで一緒に行きましょう」と約束する仕事だ。会社の価値を背負い、相手の期待を受け取り、売上という結果まで引き受ける。だから営業は、仕事のセンターピンになりやすい。

以前、「仕事とは、約束を積み重ねること」(外部サイトを新しいタブで開く)と書いた。約束を結ぶ力が最も露骨に問われるのが、営業だと思う。

僕の中の営業を、MBTIのタイプのイメージで説明すると、こんな感じだ。

  • ENFJ|人を見ながら、同じ未来へ連れていく。 相手の感情や利害を読み、提案を「あなたと私の共通の物語」に変える。紹介や大型提案、組織を巻き込む営業に強い。
  • ESTP|その場を読み、すぐ次の一手を打つ。 会話の温度、相手の迷い、決断のタイミングを瞬時につかむ。商談を止めず、行動へ変える力がある。
  • ENTJ|ゴールから逆算し、意思決定を前に進める。 予算、権限、課題、競合を整理し、大きな案件を構造として動かす。経営層への提案とも相性がいい。
  • ESFJ|信頼を積み上げ、約束を守り続ける。 こまめな連絡、気配り、アフターフォローで関係を育てる。一度売って終わりではない営業の強さだ。

どれが優れているという話ではない。営業は、未来を語る力、今を動かす力、構造をつくる力、関係を守る力を使い分ける仕事なのだと思う。

僕自身も、まだない景色を相手が信じられる解像度で見せたい。ただし、期待を高めるなら、その先を実現する責任まで持ちたい。言葉で動かす自分と、それを形にする自分は、切り離せない。

3. 僕の中の広報は、表に出る前に考え込む

広報というと、イベントで人前に立ち、メディアと話し、会社の顔になる華やかな仕事に見える。

僕にも、表に出る前に一人で考え込むところがある。この言い方で誤解されないか。期待させすぎていないか。伝えた後に、ちゃんと信じてもらえるか。

広報の本体は、目立つことではない。会社の中に散らばる事実を拾い、まだ言葉になっていない価値を見つけ、誰に、いつ、どう伝えるかを考えることだ。

経営者の発言を聞く。現場の変化を追う。記者が気にしているテーマを覚える。過去の記事を読み返す。炎上しそうな小さな違和感を先に察知する。取材の後も関係をつなぐ。

かなり地味で、静かで、執念深い。

そんな広報の視点を、僕はこんなタイプのイメージに重ねる。

  • INFJ|出来事の奥にある意味を読み、物語にする。 経営者の思想、社員の動機、社会の空気をつなぎ、単なるニュースを「なぜ今これを伝えるのか」に変える。
  • ISFJ|細部と関係を記憶し、信頼を守る。 名前、過去のやり取り、表現のニュアンス、約束した日程を丁寧に扱う。広報の信用は、この積み重ねでできている。
  • ENFJ|会社の内と外をつなぎ、人を巻き込む。 社内から話を引き出し、取材相手と関係を築き、必要な場面では会社の顔として語る。
  • ISTJ|事実と履歴を管理し、事故を防ぐ。 数字、固有名詞、承認フロー、公開範囲を正確に扱う。危機管理広報では特に、この冷静さが効く。

広報には、内向的に深く集める力と、外向的に届ける力の両方がいる。だから僕の言う「ネクラ」は悪口ではない。表に出る一言のために、裏側で誰より静かに考え続けられる人への敬意だ。

4. 僕の中のマーケターは、こそこそ人間を見ている

人と話すのは好きだ。でも、その人がなぜそう言ったのか、なぜ動いたのかを一人で考える時間も好きだ。

僕がマーケを「陰キャ」と呼びたくなるのは、その観察のしつこさに、自分の一面を見るからだ。

なぜこの人はクリックしたのか。なぜ途中で離脱したのか。なぜ買ったのに続かなかったのか。どの言葉で止まり、どの比較で迷い、誰の一言で決めたのか。

表では笑っていても、頭の中ではずっと仮説を立てている。アクセス解析を見て、検索語を読み、SNSの反応を追い、レビューの言葉を拾う。競合の広告を保存し、売り場を歩き、顧客の矛盾を集める。

この観察や試行錯誤を、MBTIのイメージで表すならこうだ。

  • INTJ|ばらばらな情報から、長期の勝ち筋を設計する。 市場、競合、顧客、商品を一つのモデルとして捉え、どこに資源を置くかを決める。
  • INTP|数字や現象の裏にある原因を掘り続ける。 常識を疑い、「本当にその施策が効いたのか」を分解する。分析やリサーチで強さが出る。
  • INFJ|データの向こうにいる人の動機を読む。 数値だけでは説明できない不安、憧れ、罪悪感、文脈を捉え、顧客理解に厚みをつくる。
  • ENTP|仮説を量産し、実験で確かめる。 切り口を変え、コピーを変え、チャネルを変えながら、正解のない市場で可能性を試す。

広報が「この会社をどう理解してもらうか」を考える仕事なら、マーケは「人はなぜ動くのか」を執拗に考える仕事だと思う。

良いマーケターは、答えを知っている人ではない。人間を見続け、仮説を更新し続けられる人だ。

僕の実務感覚では、広報とマーケの境界がほとんど重なる場面もある。価値があるのに、まだ知られていない。知ってもらい、意味が伝わったことが、選んでもらうきっかけになる。だから「どう知ってもらうか」まで、つくる側として考えてきた。

もちろん、知られれば必ず売れるわけではない。価格、信頼、必要性、使い勝手にも左右される。広報とマーケが同じ仕事だと言いたいのではなく、僕が一つのプロダクトを届けようとするとき、その間に線を引けなかったという話だ。

5. 僕の中の広告屋は、振り向いてほしい

広告は、広報やマーケより少し派手だ。

深く調べるだけでは足りない。最終的には、一枚、一行、数秒で人の目を止めなければならないからだ。

誰も待ってくれないタイムラインで、こちらを向かせる。商品の機能を説明する前に、相手の欲望や不安に触れる。しかも、面白いだけでは終われない。認知、クリック、購入という結果につなげる必要がある。

振り向いてもらうために使う視点にも、こんなタイプのイメージがある。

  • ENTP|見慣れたものを、違う角度から言い換える。 意外な企画、強いコピー、常識をずらすアイデアを生む。会議で案を増やす力も強い。
  • ENFP|感情と可能性をつなぎ、人をワクワクさせる。 商品を機能ではなく、体験や未来の物語として届ける。
  • ESTP|今この瞬間の空気を読み、即座に打つ。 トレンド、媒体、反応速度をつかみ、短い時間で人の注意を奪う。
  • ENTJ|表現を事業成果まで運ぶ。 予算、媒体、制作、KPIを束ね、キャンペーン全体を勝たせる。クリエイティブを自己満足で終わらせない。

広告は、マーケの仮説を、人が無視できない表現に圧縮する仕事なのかもしれない。派手さの裏には、観察と計算と執念がある。

6. 僕の中のデザイナーは、やっぱり放っておいてほしい

デザイナーは何者か。

人の気持ちを読む。情報を整理する。形をつくる。美しさに執着する。機能を考える。未来を想像する。経営者の曖昧な言葉を、見えるものに変える。

役割が広すぎる。

僕がデザインで使う視点も、一つのタイプのイメージでは語りきれない。

  • INFP|自分の価値観から、まだない世界観を立ち上げる。 ブランドの思想やコンセプトに、嘘のない芯をつくる。
  • ISFP|色、形、素材、余白の感覚を信じ、静かに磨く。 言葉になる前の美しさを、手触りのある表現に変える。
  • INTJ|複雑な情報を整理し、壊れにくい仕組みにする。 情報設計、サービス設計、ブランドシステムで力を発揮する。
  • ISTP|触って確かめ、使える形に落とす。 道具、プロダクト、UIのように、機能と操作感を実物で詰めていく。
  • ENTP|前提を疑い、別解を大量に出す。 既存の要素を組み替え、企画とデザインの境界を越える。
  • ENFP|人や出来事をつなぎ、体験を物語にする。 共感を呼ぶブランド体験や、場全体の空気を設計する。

同じ「デザイナー」でも、世界観から始める人、感覚から始める人、構造から始める人、機能から始める人がいる。

自由に生きているというより、自由に見えるほど多くの矛盾を同時に扱っている。だから、もう放っておいてください。締切だけは守ります。

7. 僕の中のエンジニアは、「本当に動く?」と聞いてくる

そして、エンジニアの視点も僕の中にある。

未来を語り、見せ方を整えた後で、急に冷静な自分が出てくる。「その仕様で実現できる?」「入力が想定と違ったら?」「途中で失敗した人は、戻ってこられる?」

かっこいい画面をつくることと、使えるプロダクトにすることの間には、まだ仕事がある。操作への応答、データの状態、例外、保守。画面の外側にも、体験は続いている。

僕の中のエンジニアをMBTIのイメージで表すなら、こんな感じだ。

  • INTP|なぜそう動くのか、仕組みを掘る。 表面的な不具合だけでなく、前提や原因まで確かめたくなる視点。
  • INTJ|全体の構造と、その先の変更を考える。 今の一機能だけでなく、拡張や運用まで見渡して設計する視点。
  • ISTP|まず動かし、触りながら確かめる。 小さく試作し、実際の挙動から次の判断をする視点。
  • ISTJ|条件と手順を丁寧に確認する。 想定外の入力や失敗時の動きまで確認し、安定して使える状態を守る視点。

これはエンジニアの性格を断定した一覧ではない。僕が実装や検証に向き合うとき、必要だと感じる姿勢を重ねている。

営業の自分が大きな約束を持ってくると、エンジニアの自分が実現方法を問い、デザイナーの自分が使う人の気持ちを問い直す。頭の中で、ちょっとした会議が始まる。

僕の中のエンジニアは、約束を「本当に使えるもの」にするためにいる。

8. 全部できる、よりも、全部が気になる

ここまで書くと、何でも一人でできると言っているように見えるかもしれない。でも、それぞれの専門家と同じ深さで、全部を担えるという話ではない。

僕は、つくったものの行く先が気になるのだ。

知ってもらえなければ伝え方を考える。使ってもらえなければ入口を見直す。途中で離れてしまうなら、その理由を探す。約束と体験がずれていたら、表現かプロダクトか、あるいは両方を直す。

そのたびに、自分の中の別の役割が前に出てくる。

Myers & Briggs Foundationの説明(外部サイトを新しいタブで開く)でも、MBTIは能力や優劣ではなく、心の使い方の好みを扱うものだ。この記事でタイプ名を並べたのは、職種への適性や採用を決めるためではない。

僕が振り返りたかったのは、7年間、プロダクトを人に届けようとして使ってきた視点だった。

営業として約束を結ぶ。広報として信頼を育てる。マーケとして反応を読む。広告として入口をつくる。デザイナーとして体験を整える。エンジニアとして動く形にする。

順番通りに進むわけでもない。つくりながら伝え方を考え、反応を見て、またつくり直す。足りないところは、その仕事を深く知る人と一緒に考える。

プロダクトデザインは、僕にとって「つくった価値が、人に届くところまで気にする仕事」だ。

陽キャの僕も、ネクラな僕も、陰キャの僕もいる。目立ってほしい自分も、放っておいてほしい自分も、仕組みを確かめたい自分もいる。

全部、同じプロダクトをちゃんと届けたい自分だった。

デザイナーは放っておいてください、と言いながら、結局その先まで首を突っ込んでしまう。

たぶん僕は、そういうデザイナーなのだ。

  • #デザイン

NACK notes / PROFILE

田村 祐大

Designer / NACK Founder

岡山県出身、京都在住。京都芸術大学芸術学部卒業。暗号資産・Web3領域のプロダクトデザインに約7年間携わった後、NACKを始動。

NACK notesでは、映画、YouTube、音楽、車、日々の選択を、自分の経験とアート・デザインの視点から読み直す。専門家として結論を示すのではなく、一人の読み手として考えた過程を記録している。