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「あいつに任せればできる」は、どうつくられるのか——管理職という社内営業

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紙のコラージュ。会議室の椅子、計画を手渡す手とチームの作業写真。『任せられる人は、何を売っているのか。』

一人ならできる仕事でも、チームで引き受けると難しくなることがある。自分の腕だけでは決まらない。メンバーの予定、ほかの部署の協力、上司の判断。自分の手の外にあるものまで含めて、仕事を進めなければならないからだ。

そこで管理職に必要になるのは、チームが成果を出せるように、必要な条件と周囲の協力を整えることだと僕は思う。

何を実現できるのかを説明し、そのために必要な人や時間、判断を求める。僕が管理職を「社内営業」と考えるのは、この仕事があるからだ。

一人の「できる」は、そのままチームの「できる」にならない

一人で作っているときは、目的も完成形も、作業の順番も、自分の頭の中でつながっている。途中で変更があっても、自分が理解していれば次に進める。

ところが、人に任せると、そのつながりを外へ出す必要がある。

何のためにつくるのか。どこまでできれば完成なのか。何を自分で決めてよくて、どこから確認が必要なのか。自分なら判断できることも、相手には判断の材料が渡っていないかもしれない。

たとえば、バナーを一枚つくる仕事を考えてみる。サイズと納期を伝えただけでは、誰に何を伝えたいのか、どの情報を優先するのか、どんな状態なら公開できるのかまでは分からない。担当者が制作を終えても、確認する人が決まっていなければ、そこで止まる。

自分がつくればすぐ終わるのに、と思う場面はある。でも、担当者の制作速度だけを比べていると、依頼や確認の仕方にある問題を見落とす。

自分の中では省略できたことを、チームが判断できる形にする。 任せる仕事は、そこから始まる。

目標を引き受ける前に、実現する条件を話す

チームで成果を出すには、任せ方を工夫するだけでは足りない。そもそも、人や時間が足りているかという問題がある。

上司から「来月は、今月の倍をお願いしたい」と言われたとする。そこで「頑張ります」と受け取るだけでは、作業する人の負担は増えても、達成する見通しは立たない。

まず、何を増やしたいのかを確かめる。制作本数なのか、公開した施策の数なのか、それによって得たい成果なのか。同じ「倍」でも、必要な仕事は変わる。

制作本数を増やすなら、作業時間を確保する、定型化できる部分を増やす、確認を早くする、別の仕事を減らす、といった選択肢がある。人を増やす場合にも、教える時間は必要になる。

そこで、目標と実行する条件を一緒に提案する。

「この本数をこの日までに出すなら、優先順位を決めてほしいです。別件を翌月へ動かし、確認を二営業日以内にもらえるなら、この計画で進められます」

これは、目標から逃げるための説明ではない。何を変えれば実現に近づくのかを、判断できる形にするための説明だ。

以前、デザイナーですが、営業の話をします。仕事は「約束」。(外部サイトを新しいタブで開く)で、仕事を「約束」という視点から考えた。管理職も、チームの仕事について約束する立場にいる。だからこそ、引き受ける前に、約束を果たせる条件を確かめたい。

社内営業で伝えるのは、協力する理由

必要な条件は、管理職一人では整えられない。

予算を決める人、素材を用意する部署、内容を確認する担当者。それぞれに別の仕事があり、こちらの依頼だけを待っているわけではない。

だから、「必要なのでお願いします」から、もう一歩説明する必要がある。

何のための仕事なのか。いつまでに何が必要なのか。その協力があれば何が進み、返事が遅れると何に影響するのか。相手にも都合があるなら、どこを変えられるのか。

たとえば、来週公開するページの確認を頼むなら、「お手すきのときに見てください」より、「水曜までに内容を確認いただければ、金曜の公開に間に合います。確認が難しい場合は、公開日の調整が必要です」と伝えるほうが、相手は判断しやすい。

僕がいう社内営業は、こうして仕事の目的と条件を説明し、協力について合意することだ。

頼む側も、相手が引き受けられる範囲を確かめる。難しいなら、優先順位や進め方を相談する。その調整をせずにメンバーへ「何とかして」と渡せば、組織の問題を個人の頑張りで埋めることになる。

管理職には、チームの外で必要な話をして、メンバーが取り組める状態をつくる役割がある。

任せるときは、仕事と一緒に判断の材料を渡す

条件が整ったら、次はチームの中で仕事を進める。

そこで渡したいのは、作業の指示だけではない。目的、完成の基準、自分で決めてよい範囲、途中で相談する時点も一緒に渡したい。

バナーの例なら、「このキャンペーンへの申し込みを促したい」「公開日は動かせない」「見出しとレイアウトは提案してほしい」「価格表記は担当部署の承認が必要」と分かっていれば、担当者は何を優先して考えるかを判断できる。

途中の確認も、完成してから全部見せてもらうより、構成を決める段階で一度話すほうが、変更の負担を小さくできる。逆に、任せた範囲の細部まで毎回承認を求めれば、管理職の返事待ちが増えてしまう。

任せるとは、すべてを確認することでも、何も聞かずに待つことでもない。どこでは本人が判断し、どこでは一緒に考えるかを決めることだと思う。

自分がつくったほうが速い、と感じたときほど、どこで止まっているのかを見たい。知識が足りないのか、判断の基準が曖昧なのか、そもそも時間が足りないのか。原因によって、教えることも、変える条件も違う。

毎回自分が仕事を取り返せば、その場は終わるかもしれない。でも、次も自分がいなければ進まない。チームでできることを増やすには、任せた後の会話まで必要になる。

「任せられる」という信用は、途中の対応でも決まる

「あいつに任せればできる」。そう思われたい気持ちは、僕にもある。

ただ、その信用を得るために、最初から何でもできると言ってしまうと、後でチームが苦しくなる。達成が難しくなっても言い出せず、最後に誰かが無理をすることになる。

むしろ、任せる側が知りたいのは、今どこまで進んでいて、何が問題で、次に何を決めればよいかだと思う。

予定が崩れたなら、早く知らせる。理由と影響を整理し、納期を動かすのか、範囲を絞るのか、応援を求めるのかを提案する。引き受けた後も、実現できる計画へ直し続ける。

成果が出たときには、誰が何を担ったかも伝える。チームの仕事が見えるようになれば、次に何を任せられるか、どんな支援が必要かも周囲が考えやすくなる。

仕事の目的を説明することも、進捗を知らせることも、成果を伝えることも、協力を続けてもらうための仕事だ。ここには、営業だけでなく広報に通じる役割もある。

「任せられる」という評判は、そうした対応の積み重ねでできていくのだと思う。

「あの人ができる」から、「このチームならできる」へ

管理職の社内営業は、チームの力を説明し、その力を発揮するための協力を得る仕事だ。そして、得られた協力を、メンバーが動ける条件へ変えていく。

上司とは、目標と優先順位を決める。ほかの部署とは、必要な協力と日程を合わせる。メンバーとは、目的と判断の範囲を共有する。進めてみて問題があれば、自分が責任を持って調整する。

そのつながりができれば、管理職が一つひとつ指示しなくても、チームは判断して進めるようになる。僕がいない時間にも仕事が動き、困ったときには相談が届く。目指したいのは、そういう状態だ。

「あいつに任せればできる」という信用の中身は、本人が全部を片づける能力だけではない。必要な人と話をし、条件を整え、チームで約束を果たせることにある。

管理職としてつくりたいのは、「このチームに任せればできる」と言われる状態だ。


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営業について考えるきっかけになった番組と、仕事の約束について書いた記事。

    NACK notes / PROFILE

    田村 祐大

    Designer / NACK Founder

    運営者
    田村 祐大
    学歴
    京都芸術大学芸術学部卒業
    活動
    NACKの運営、Journal / Timesの企画・編集

    岡山県出身、京都在住。暗号資産・Web3領域のプロダクトデザインに約7年間携わった後、NACKを始動。

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